損害賠償の基礎知識
損害賠償責任は民法に定められている
他人の物を誤って壊したり、ケガさせてしまったときに、その修理費や治療費を賠償しなければならないのは、社会の一般常識として当たり前のことではありますが、法律上の根拠はどこにあるのでしょうか。
それは、民法の次の定めによります。
民法709条 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
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子供の責任は親がとらなければならない
「自分がしたことの結果については、自分で責任を取る」ということは大人であれば当たり前のことですが、気になるのが、子供が加害者となってしまった場合の責任の所在です。
民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識(理解)するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」としています。つまり、「子供が自分の責任をきちんと自覚できない場合は、損害賠償責任は負わない」ということです。
責任を自覚できない年齢の境目は小学生以下
子どもが小学生以下の場合、監督義務を負っている人(通常は親)の責任となる
では、自分の責任を自覚できる年齢は何歳くらいからでしょうか。これまでの裁判例ではおおよそ12歳前後とされています。したがって子供が小学生なら、子供自身は法的責任を負わないことが多いということになります。
ところが、子供自身は法的責任を負わない場合であっても、親がその責任を負うことになるケースも少なくありません。なぜなら民法714条で「民法712条~の規定責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定め、子供自身が責任を負わない場合には、子供を監督する義務を負っている人(多くの場合は親)に責任を負わせているからです。
子どもが中学生以上の場合でも賠償命令は親に
中学生以上でも、子どもに賠償資力が無い場合は親の責任を追求される
では、逆に責任能力がある中学生以上の子供について、親は責任を負わないのかというと、そういうわけではありません。
中学生以上の子供に責任能力があるとしても、損害の賠償となると話は別です。通常は未成年者に金銭を支払う能力はないため、被害者は賠償を得ることができなくなってしまいます。そこで判例は子供に責任能力がある場合でも、被害者は、親自身に監督義務違反があり、それと結果の間に因果関係がある場合には、親自身の責任を追及できるとしています。
ちっちゃい頃はちょっと目を離した間に何をしでかすか分からないし、成長するにつれ子供がどこで何をしてるか四六時中監督するなんて到底無理ですよね。しかし、親は自分でちゃんと子供の行為を監督をしていたということを証明しない限り、いつ(場合によっては非常に重い)賠償責任を負うことになるか分からないのです。
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