損をしない住宅の10年点検での
メンテナンス業者の選び方

1. 住宅の10年点検とは

日本の住宅の寿命は欧米に比べ短いと言われ、平均で30年とされています。これに対してアメリカは55年、イギリスは77年とされています(国土交通省「長持ち住宅の手引き」)。近年は住宅品質が全体的に向上し、構造別の寿命は木造や軽量鉄骨構造が30年から50年、重量鉄骨構造が40年から50年、RC構造が50〜80年とされていますが、それでも欧米には及びません。

住宅寿命が違う理由としては、日本人が新築好きであるということもありますが、住宅のメンテナンスにコストや手間をかけていないことが挙げられます。住宅を長持ちさせることは、経済成熟時代において環境に及ぼす負荷を小さくするだけでなく、資産価値の維持・向上に繋がります。

こうした社会情勢を踏まえ、国は住宅の長寿命化政策を推進しています。2000年には「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、住宅建物の主要構造部分および雨水の侵入を防止する部分について、売主、施工会社またはハウスメーカーによる10年間の保証(10年保証)が義務化されました。

また、2009年には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、劣化対策、耐震性、省エネルギー対策などの性能基準を満たした長期優良住宅については、一般住宅より住宅ローン控除や税制面での優遇措置が与えられています。



10年点検はその名の通り、売主や施工会社またはハウスメーカーが、10年間の保証の最後の年に行う点検です。一般に住宅は建築後10年目あたりから劣化が目立ち始め、メンテナンスが必要になると言われています。
したがって、最後の無償点検である10年点検においてしっかりメンテナンスをしておくことが、その後の住宅の寿命と資産価値を大きく左右します。保証期間内に瑕疵が見つかった場合は、売主や施工会社またはハウスメーカー等が彼らの責任において無償で修理をしますが、保証期間を過ぎた場合は、住宅オーナーが自費で修理しなければなりません。また、この10年点検の段階でしっかりメンテナンスをしておくと、将来必要となるメンテナンス費用が大きく変わるとも言われます。特に外壁は、劣化が激しくなると塗装費用などが大きく変わってきます。
さらに、10年目というのは、住宅だけでなく大型家電や給湯器など住宅設備・機器が寿命を迎え始める時期でもあるため、住宅について早めにメンテナンスをしておくことは、大きな出費が同時期に重なることを防ぐことにもつながります。
売主やハウスメーカー等によっては、自社保証として20年や30年、あるいは有料で60年などの長期保証を行っているケースもありますが、保証があっても住宅の劣化は避けられません。特に、屋根や天井裏、床下、配管などは、日常的なチェックは難しいため、10年点検をしっかり行う必要があります。



10年保証の対象となる箇所は、大きく「構造耐力上重要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」です。これらの個所は普段見えない部分であり、「隠れた瑕疵」が存在する場合があります。
「構造耐力上重要な部分」とは、主に「基礎」「柱」「筋交い」「土台」「床」「屋根」「小屋組」「梁」などであり、「雨水の侵入を防止する部分」とは、主に「屋根」「外壁」を指します。なお、10年保証の対象となるのは、売主やハウスメーカー等による施工の時点から存在した隠れた瑕疵であり、地震や火災、風災などの自然災害による不具合や、住宅オーナーが自ら追加で行った工事や修理によって発生した不具合は対象になりません。
「構造耐力上重要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」は、住宅の耐久性を左右する重要なポイントです。こうした点検は、売主やハウスメーカー等が無償で行うケースがほとんどですが、売主やハウスメーカー等が瑕疵を認めない場合もあり、住宅オーナーが中立の立場にある専門業者などに依頼して点検(ホームインスペクション)を行うケースも増えています。

2. 住宅の10年点検のポイント

10年点検は、保証義務期間内に無償で点検が可能な最後のタイミングです。漏れがないよう、入念にチェックする必要があります。屋外と屋内の主なチェックポイントは次のとおりです。






屋外(住宅の外部)のチェックポイント

建築後10年ほどで劣化が目立ち始めるのが、風雨や日照にさらされる屋外です。特に外壁は、10年ほど経過した頃からメンテナンス工事を入れる例が多いようです。


外壁は、「ひび割れ」や「はがれ」がないかをチェックします。外壁の構造上、壁の中に防水シートが入っているため、ひび割れから雨水が侵入してくることはあまりありませんが、防水シートの施工に問題があった場合などは、雨漏りがしたり水が染み込んだりします。

屋根にひび割れやズレがある場合は、雨漏りの原因になります。外壁同様、風雨や日照にさらされるため、建築後10年を経過した頃から劣化が始まることが多いようです。屋根については、目視で「ひび割れ」や「浮き」などがないかをチェックします。

ベランダや屋上がある場合は、床のひび割れなどにも気をつけます。また、手すりのガタツキや劣化のほか、笠木(壁の一番上に渡す木)、排水口、室内とベランダの跨ぎ部分などの劣化にも注意します。


屋内(住宅の内部)のチェックポイント

室内は、雨漏りの染み、歪みを中心にチェックします。まずは、壁や天井に大きなひびがないかをチェックします。下地材に沿った縦や横のひび割れが出ることがありますが、経年劣化の一部と判断されることが多いようです。
一方で、数が多かったり、斜めにひび割れが入っていたりする場合は問題です。また、雨漏りが起こりやすい個所として、各部屋の天井、サッシの上部、屋根裏、戸袋などの収納部などについて、注意してチェックします。屋内は、家電や机や椅子など家財があるため、その裏や陰が点検しづらい場合があります。 点検日には、家財を移動させてその裏や陰が見えるようにしておいたり、一部をトランクルームなどに預けたりして、壁や天井、床、柱が見えるようにしておくとよいでしょう。

トイレやキッチン、風呂場などの水回りも入念にチェックしたいところです。劣化してひび割れなどが起きていると、すぐに水が浸透し、壁や柱といった躯体に影響を与えます。

日常では目にしない床下のチェックも重要です。土台の木の部分が腐っていないか、カビが生えていないか、基礎がコンクリートのベタ基礎でない場合はシロアリが巣食っていないかなど、入念に調べます。



点検は、ハウスメーカー等が派遣する専門家が行いますが、これまで述べたチェックポイントについては一緒に確認し、どういった箇所が劣化しやすいかを把握しておき、その後の継続的なメンテナンスの参考にされることをおすすめします。

10年点検で見つかった瑕疵や劣化部分について、どこをどのタイミングでメンテナンスしていくかの判断については、点検結果の評価レベルに応じて専門家に相談して決めるとよいでしょう。ひとつの目安としては、外壁の塗装や補修、目地のシーリング、 バルコニーや屋上の防水、手すりなど屋外の木部・鉄部の再塗装、床下の防蟻工事など、屋外、あるいは床下などの見えづらいところから優先的にメンテナンスを行うと、家の寿命を延ばすために大きな効果が期待できます。

3. メンテナンス業者の選び方

実際のメンテナンスについては、対象となる瑕疵部分以外の劣化部分もまとめて住宅を施工した施工業者やハウスメーカーに依頼することもできます。ただし、メンテナンス内容は多岐に渡るため、個別に専門業者に依頼する方がコスト面や小回りの良さなどで有利なことが多いようです。

メンテナンス業者選びのポイントは、次のとおりです。




メンテナンスを専門にしていて、実績がある

メンテナンス実績は、業者のホームページなどで確認すると良いでしょう。また、しっかりした専門業者は、それぞれ業界団体や組合、自治体などの入札業者などとして登録されていることが多いため、こうした情報を目安にするのも良いでしょう。


地元での施工実績がある

地元で長年事業を続けてきたことは、業者として評価を得ている証明でもあります。また、地元の業者であれば、こまめな対応も可能です。


点検にしっかりと時間をかけてくれる

屋根や床下などは、自由に動けない分、点検に時間がかかりますし、専用の測定器などで調査した上でメンテナンスの工事に入る必要があります。しっかりと点検に時間をかけてくれるだけでなく、どんなメンテナンスをすべきか丁寧に説明してくれることもポイントです。


メンテナンス結果(写真・動画)を提供してくれる

どのような工事をし、どのような状態になったかについて、しっかりと記録し、写真や動画等を用いて作業内容の説明をした後、それらの資料を工事の証拠として提供してくれる業者は、信頼して良いでしょう。悪徳業者の場合は、実際の写真と異なるものを用いるケースがありますので、少しでも疑問がある場合はしっかり質問する必要があります。

4. まとめ

「人生100年時代」と言われる中、住宅の長寿命化は、豊かな老後の実現にも大きく寄与します。

せっかく10年点検の案内が来たにもかかわらず、放置してしまう住宅オーナーも少なくありません。将来のメンテナンスコストを抑えるためにも、10年点検のタイミングでしっかり点検し、信頼できるメンテナンス業者による適切なメンテナンスを行うことが重要です。また、住宅だけでなく、ビルトイン型の食洗機や給湯器、IHコンロなどについても、メーカーや購入店などに依頼して、併せて点検してもらうことをおすすめします。


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