分譲マンションの「防火管理者」は誰がなるの?

~防火管理者とは?資格取得、
なり手不足の
現状について
わかりやすくご説明!~

防火管理者

建物の「防火管理者」をご存じですか? 防火管理者は建物の火災を未然に防止し、万一火災が発生した場合でも被害を最小限にとどめる対策を行う責任者です。
多数の人が出入りする建物では防火管理者を選任しなければならないことが消防法に定められています。このように書くと、飲食店が入ったテナントビルや大型商業施設などをイメージされるかもしれませんが、防火管理者は一般的な分譲マンションにおいても選任が必要となっています。
このコラムでは防火管理者の役割や分譲マンション等における選任状況、なり手不足の問題などについて、東京海上グループの日新火災海上保険(株)の子会社であり、リスクマネジメントに関する調査・研究、コンサルティング業務などを行うユニバーサルリスクソリューション(株)協力のもと、わかりやすくご説明します。

1.防火管理者の役割

建物を火災に強い構造にして消防用設備等をしっかり設置しても、人が居住し、生活するために火気を使用し、そこに可燃物が置かれる限り、火災が発生する危険があります。日本国内では年間約38,000件の火災が発生し、火災により1,400人以上の方が亡くなっています。
出典:「令和元年版 消防白書」(総務省消防庁)
(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r1/47787.html)

防火管理者の役割は、火災の発生を未然に防止し、万一火災が発生しても被害を最小限にとどめる対策をすることです。主な仕事は、消防計画の作成、消防訓練の実施、避難路等の維持管理です。
消防計画とは、火災の防止および万一火災が発生した場合に被害を最小限にするための計画で、各建物の実態に合ったものをあらかじめ定め、消防署に届け出ておく必要があります。また、マンションなどの共同住宅では、定期的に消防訓練を実施することとされており、これも防火管理者の仕事です。避難経路等の維持管理は、マンションの通路に住人の荷物が置かれていないかなどを確認し、火災時の避難に支障が出ないようにすることなどです。 いずれも管理会社、理事会の協力なしに行うことは難しいため、連携を取りながら進めていくことになります。


2.消防法により防火管理者の選任が必要とされている建物

次の建物では防火管理者の選任が必要です。マンション等の共同住宅は、収容人員が50人以上の場合に対象となるので、多くのマンションで選任が必要となります。


<防火管理者の選任が必要な主な建物>

  • 事務所、共同住宅など特定の方が出入りする建物で、収容人員が50人以上
  • 店舗・飲食店・病院など不特定多数の方が出入りする用途がある建物で、収容人数が30人以上
  • 老人ホームなど自力で避難することが著しく困難な方が入所する社会福祉施設等の建物で、収容人数が10人以上

防火管理者の選任が必要な主な建物

3.防火管理者になるための資格

防火管理者に必要な資格は消防法令に定められており、防火管理に関する知識および技能を有し、管理的または監督的な地位にある者を選任するとされています。
防火管理者には甲種防火管理者と乙種防火管理者があります。建物の用途や収容人員等により、甲種防火管理者の選任が必要であったり、甲種または乙種いずれかの防火管理者の選任が必要であったりします。 分譲マンションなどの共同住宅は「非特定用途の防火対象物」といい、収容人員が50人以上の場合に防火管理者の選任が必要となり、延べ面積が500㎡以上の場合は、甲種防火管理者の選任が必要です。したがって、多くの分譲マンションでは甲種防火管理者を選任しなければならないということになります。


<防火対象物と防火管理者の資格区分>

用途

非特定用途の防火対象物

防火対象物全体の収容人員

50人以上

防火対象物全体の延べ面積

500㎡未満

多くの分譲マンションで甲種防火管理者の選任が必要です!

500㎡以上

資格区分

甲種または乙種防火管理者

甲種防火管理者

出典:「防火管理 実践ガイド」(東京消防庁)
(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/)


防火管理者の資格取得のためには各自治体で実施されている防火管理講習の受講が必要です。あわせて防災管理者講習が実施され合計2日間の日程で行われています。受講後の確認テストを経て国家資格である甲種防火管理者と防災管理者の資格を取得することができます。
申込みは各地の消防署で受け付けています。お近くの消防署または自治体のホームページで、講習日程や申込方法を確認しましょう。

豆知識防火管理者に質問!防火管理者講習では何をするの?

日新火災の子会社であり、リスクマネジメントに関する調査・研究、コンサルティング業務などを行うユニバーサルリスクソリューションには、仕事がら、防火管理者の資格保有者が複数います。そのうちの1名に防火管理者講習でどのような講習を受けたのか聞いてみました。


Q:どこで受講しましたか?
A:東京都で受講しました。東京消防庁の施設で、大学の講義を受けるような大きな会場でした。

Q:他の参加者はどんな人たちでしたか?
A:20代、30代くらいの比較的若い方の参加が多いと感じましたが、全体的に見て年代や性別に大きな偏りはありませんでした。私も業務の一環で受講しましたが、その方たちもテナントや事業所の防火管理者に選任されたために受講しているようでした。もちろんマンション管理組合で防火管理者に選任された方もいらっしゃいました。

Q:講義はいかがでしたか?
A:講師は消防署のOBの方と思われます。受講者の興味を引くようにテキストを読み上げるだけでなく、具体的なエピソードも交えてお話ししてくださったので、最後まで興味深く聞くことができました。内容は消防法や建築基準法などに詳しくない一般の方でもそれほど難しく感じることはないと思います。

Q:講師の話を聞くだけ(座学のみ)ですか?
A:いいえ。実技もあります。東京消防庁には防災センターの模擬設備、火事が起きている想定の部屋、屋内消火栓の放水訓練設備などの大規模な設備があり、実際にこれらに触れたり、操作したりします。仕事がらこういった設備には関心があるので、私としてはとても良い経験になりました。

Q:試験はあるのですか?
Aはい。講習の最後に確認テストを行います。私が受講したときは全員めでたく合格でした。


4.防火管理者の選任状況

防火管理者の選任状況は十分とは言えません。下表は分譲マンション、賃貸マンション、アパートなど共同住宅における防火管理者の選任状況です。法令で選任が義務付けられている防火管理者ですが、残念ながら約22.1%が未選任となっています。また、消防計画も28.2%の建物で届出されていません。この場合、消防署が実施する立入検査において、防火管理者の未選任、消防計画の未届を指摘されることになります。

共同住宅

全用途

対象件数

175,822棟

1,074,294棟

防火管理者選任

137,000棟(77.9%)

881,000棟(82.9%)

消防計画届出

126,228件(71.8%)

825,194件(76.8%)

出典:「令和元年版 消防白書」付属資料「全国の防火管理実施状況」(消防庁) から加工
(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r1/items/part7_section1.pdf)

5.防火管理者のなり手不足(マンション管理組合の事情)

分譲マンションにおいて防火管理者が選任されていないケースでは、なり手がいないという事情があり、これには主に3つの理由があります。

  • 防火管理者の資格取得の負荷
  • 高齢者が多い場合、防火管理者の業務を行うことが困難
  • 防火管理者の責任に対する心理的な負担

●防火管理者の資格取得の負荷
通常、分譲マンションの管理会社は防火管理者の業務の補助はしますが、管理会社の社員が防火管理者に就任するわけではありません。原則として、防火管理者は住人の中から選任する必要があります。
実態としては、マンション管理組合の理事や理事の家族が、任期を決めて輪番で防火管理者になったり、報酬制度を設けて住民から防火管理者を募ったりするケースもありますが、防火管理者になるための資格で記載のとおり、資格取得には各自治体で実施されている講習を2日間受講しなければならず、資格取得の負担は決して小さくはありません。

●高齢者が多い場合、防火管理者の業務を行うことが困難
防火管理者の業務は、消防署への消防計画の届出のほか、定期的な消防訓練の実施、万一の場合の避難経路等の維持管理などがありますが、分譲マンションの築年が経過するとともに住人の高齢化も進み、次第にこれらの業務を担うことが困難になっていきます。

●防火管理者の責任に対する心理的な負担
また、万一火災が発生した際に管理責任を問われる可能性があるということもあり、心理的な面からも防火管理者に選任されることが嫌がられるということがあります。

こうした理由により、防火管理者のなり手不足という状況が生まれやすくなっています。


6.防火管理者のなり手不足の解決策としての外部委託

防火管理者のなり手不足という状況があるとはいえ、法令で定められていることですし、何よりご自分の大切な財産であるマンションで万が一にも火災が発生するようなことは避けたいですよね。
実は、防火管理者の業務はプロに委託することもできるのです。日新火災海上保険株式会社(東京海上グループ)の完全子会社であり、リスクマネジメントに関する調査・研究、コンサルティング業務などを行うユニバーサルリスクソリューション株式会社では、『防火管理者受託型コンサルティングサービス』を展開しています。防火管理者への就任、マンションの定期巡回点検とコンサルティングなどのサービスを提供していますので、防火管理者のなり手不足に悩んでいる管理組合様はぜひ一度サービスの詳細をご覧ください。

「ユニバーサルリスクソリューション『防火管理者受託型コンサルティングサービス』」

まとめ

●防火管理者とは、建物の火災を未然に防止し、万一火災が発生した場合でも被害を最小限にとどめる対策を行う責任者のこと。消防計画の作成、避難訓練、避難経路の維持管理などを行う。

●一般的な分譲マンションでも防火管理者を選任することが法令で義務付けられているが、資格取得の負荷、住人の高齢化、防火管理者の責任に対する心理的な負荷などにより未選任となっているケースもある。

●防火管理者はプロに外部委託することも可能。


いかがでしたか? 防火管理者の必要性とお仕事をご理解いただけたでしょうか。
なお、万が一にも火災が発生してしまった場合に備え、火災保険にはしっかりとご加入いただくことをおすすめします。
火災保険は火災だけでなく、風災、雪災等の自然災害に対する補償のほか、他の戸室への水漏れによる損害賠償や災害による停電等で居住が困難になった場合の仮すまい費用を補償することもできますので、今ご加入の火災保険の補償に過不足がないか、ぜひ見直してみてください。
日新火災の自由設計型火災保険「おドクター火災保険Web」なら、必要な補償だけを選択して、インターネットでカンタンにお見積り・お申込みができますので、家計の節約に、ぜひ一度お見積りをお試しください。


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